どこにもない手
何のために手があるのか かんがえたことはあるか
わたしはありませんでした
あるひとはドアを開けるため
あるひとは文字を書くため
あるひとは文字を読むため
あるひとは納屋を焼くため
あるひとは拍手をするため
あるひとは声を聴くため
あるひとは手のことを考えるため
あるひとは顔を隠すため
あるひとは手がある人のことを考えるため
あるひとはその人のとなりにいるため
あるひとはひとと手をにぎるためだと言います
わたしは誰かがじっと
自分の手を見つめ
その手を何にも使わずに
そのままにしていることを
美しく思うために
この手があるのだと思い
やはりちがうかなと
片方の手をそっと
ポケットにしまいます
ポケットのなかでしずかに
てのひらをあわせるために